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田中彰治(助教)(2ページ) 分子研リポート2012 | 分子科学研究所

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246 研究領域の現状

田 中 彰 治(助教) (1989 年 4 月 1 日着任)

A -1).専門領域:非ベンゼン系芳香族化学,分子スケールエレクトロニクス

A -2).研究課題:

a). 量子効果素子回路の単一分子内集積化法の開拓 b).単一分子ワイヤの伝導特性の系統的解明

c). 基板表面に設置した巨大分子系の実空間構造解析

A -3).研究活動の概略と主な成果

a). 本研究では,「単一巨大分子骨格内に量子効果素子回路をまるごと集積化」するための逐次精密合成プロセスの開拓 を目指している。昨年度までに,三端子型の基本量子スイッチング素子である単電荷トンネルトランジスタ,及びター ンスタイル構造を有する巨大分子の構築プロセスを開発した。今年度は,四端子型素子である単電荷ポンプ構造を もつ巨大分子の構築に成功した。次の課題として,「単一分子内単電荷素子の実働検証」,および「多端子型素子間 の精密配線法の確立」をめざすことにした。そのためには,根幹パーツ群(トンネル/静電接合,クーロン島,ワイ ヤ/アンカー)の構造最適化,および大型分子ブロック間の逐次接合法の整備を行う必要があり,分子構築プロセ スの改善と新規開拓に着手した。その結果,N- ヘテロ環状カルベン配位子や,直接 C –H 活性化を用いた最新のカッ プリング反応を併用することにより,これまでのプロセスよりも遥かに広範な中/大型分子の精密合成が可能となる ことが分かった。これにより,根幹パーツ群の構造バリエーションは大幅に増加し,また多端子型素子を複数組み合 わせた「集積回路」の全合成への目処もついたと考えている。

b).電極/単一分子鎖/電極系における電荷輸送特性の解明と制御法の開拓を,阪大・夛田−山田 G,産総研・浅井 G らと実施している。計測法の改良により温度変化の範囲を広げて,絶縁被覆付きオリゴチオフェン群 [5–17 量体 ] の 単一分子伝導度の温度変化を検討した。その結果,14 量体において,主要な伝導機構がトンネルからホッピングへ と転移する現象が,350. K付近に観測できた。なお,計測可能な範囲では,14 量体よりも短鎖な系ではトンネル伝 導のみ,より長鎖な系ではホッピング伝導のみが観測された。14 量体の伝導度の温度変化は,K el dy sh グリーン関 数に基づくスケーリング関数で再現可能であった。このスケーリング関数法を用いて,測定圏外であった 17 量体の トンネル−ホッピング転移温度が 250. K 付近と推定できる。17 量体の方が 14 量体よりも,ホッピング伝導が“ ON” になる温度が低いことから,330. K以上の高温領域では,17 量体の方が長鎖長であるにも関わらず,14 量体よりも 伝導度が高いという「逆転現象」を確認している。一方,発光中心や磁性中心を導入した機能性分子ワイヤの電子 特性を評価するための合成・計測研究を,昨年度に引き続き,京大・田中(一)G と実施している。

c). 巨大分子系の「基板上に設置した状態での分子形状」や「局所的電子構造(特にトンネル/静電接合部分)」を, 高分解能 S T M 観測や局所分光法により,個別分子レベルで解明するための研究を,横浜・市立大の横山 G と実施 している。大型分子の,官能基分解能レベルの実空間観測を実施する場合,「良質な孤立吸着分子の試料」の作成 が必須となる。昨年度,エレクトロスプレー法により良質な試料が得られることが分かったが,ビギナーがすぐに実 施できる程の汎用性はなかった。そこで,10. nm から 120. nm 長級までの被覆分子鎖について,試料作製条件を徹底 的に再検討し,計測法としてルーチン化した。このノウハウは,阪大夛田−山田 G にも移転する予定である。

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研究領域の現状 247 B -1). 学術論文

SK. LEE, R. YAMADA, S. TANAKA, GS. CHANG, Y. ASAI and H. TADA, “Universal Temperature Crossover Behavior of Electrical Conductance in a Single Oligothiophene Molecular Wire,” ACS Nano 6, 5078–5082 (2012).

B -7). 学会および社会的活動 学会の組織委員等

分子研分子物質開発研究センター・特別シンポジウム「分子スケールエレクトロニクスにおける新規分子物質開発」主催 者.(1998).

応用物理学会・日本化学会合同シンポジウム「21世紀の分子エレクトロニクス研究の展望と課題—分子設計・合成・ デバイスからコンピュータへ—」日本化学会側準備・運営担当.(2000).

第12回日本MRS学術シンポジウム:セッション. H「単一電子デバイス・マテリアルの開発最前線〜分子系・ナノ固体系 の単一電子デバイス〜」共同チェア.(2000).

F irst.International.C onference.on.Molecular.E lectronics.and.Bioelectronics.組織委員.(2001).

B -10).競争的資金

科研費基盤研究 (C ),.「単一分子内多重トンネル接合系の精密構築法の開拓」,.田中彰治.(2007年 –2008年 ).

科研費基盤研究 (B),.「単電子/正孔トンネルデバイス回路の単一分子内集積化のための分子開発」,.田中彰治.(2010 年 –2012 年 ).

C ). 研究活動の課題と展望

「分子電線の候補分子は,剛直で直鎖状の主鎖骨格を持たねばならない。」

これは業界一般の常識である。しかし,一般に直鎖剛直分子は可溶性に乏しく,それを改善するための構造修飾をほどこす と,もはや他の機能修飾部を増設する余地が無くなってしまったりする。対してウチの分子群は,溶液中では,剛直でもない し直鎖構造もとらない。そのため,格段に良好な可溶性と可精製性を示し,また構造修飾の余地も多大である。結果,「伸 び代が大きい」巨大分子系となっている。一方,各種ナノ計測ステージ上では,「分子−基板−電極間相互作用」と「5員環 オリゴマーの構造特性」をうまく利用することにより,電荷輸送に最適な直鎖状/共平面構造をとるようにすることができる。 これを他力本願共平面性と称している。このネタは,ごく少数のスペシャリスト達と,研究現場で掘り起こし,実験的確認を しつつ発展させてきたものである。将来的に,この手法がファインマン流の分子スケール素子開発の切り札になるかは,未だ

心もとないが,今のところターゲットにしたブツは確実にゲットできている。行けるところまでは行ってみよう。

参照

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